翔んで〇〇!

独断と偏見、散文詩

金と女 vs 鬱と失恋 or 仲間と感謝

‘Show Me The Money777’が‘高等ラッパー’たちに出会った時 

m.ize.co.kr

 

IZE MAGAZINEで今期のSMTMについての面白い特集記事を見つけたので訳してみました。

10月12日にアップされたものなので話題が少し前な感じがしますが翻訳機に入れてみて文脈が掴めたので整えたくなってしまい、手直しした次第です。

あーーー、めっちゃわかるーー!という内容です。筆者の方、結構スウィンス対して辛辣な見方をお持ちなよう。ホットな登場人物に注目です。全部とは言えないけれど共感できる内容。

訳が不自然な部分もあるうえ、とても長いのですが興味があれば読んでください。

ほんとおもしろいから!

 

 

 

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『ウンソとベストフレンドになってでクレパス*1ヒップホップシーンの未来を描こうと思います。』

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Mnet「Show Me The Money777」1話でスウィングスが15歳のラッパー、チェ・ウンソの審査を見て言った言葉だ。

しかし、チェ・ウンソがスウィングスと共に未来を描いていけるかどうかは分からない。

チェ・ウンソは「Show Me The Money777」で「僕は金を自慢しない、女なんて有り得ない/最近 心を最も占めているのは黄色のリボン/真実が安全に地を踏みしめて立てる唯一の土台であることを知らなかった」とラップした。

一方、スウィングスは2010年、ラッパーBIZNIZのアルバム「不都合な真実*2で「不都合な真実?/お前らは歓喜と前戯 真実はない」という歌詞で物議を醸した。

韓国男性ラッパーたちの「金と女」に対するラップをディスしてセウォル号の真実について語る10代のラッパーと、ディスのために有名芸能人の死とその子供たちをパンチラインとして利用したShow Me The Moneyプロデューサーとの距離はクレパスで縮められるようには思えない。

 

ウィングスがチェ・ウンソと本当にベストフレンドになりたがることもある。

しかし、彼はヒップホップシーンや社会に対して明確な態度を取るラッパーを「クレパス」を握らなければいけない子供扱いする。

他のプロデューサー達もやはりチェ・ウンソに「天才だ、(歌詞レベルが)15歳ではない」と彼の年齢に集中するのみで、彼が込めたメッセージや実力に対して具体的な評価はしない。

チェ・ウンソと同じ15歳でありながら彼と正反対の歌詞を書いたディアークに対してもプロデューサー達の態度はやはり同じだ。

最近ディアークと相手方の主張がお互いに食い違っているSNS上のスキャンダル*3とは別に、彼は「Show Me The Money777」で金と名声についてラップした。

今までのShow Me The Moneyで多くのラッパーたちがしてきた態度で、舞台外でも「こわい奴はいない」という自信満々なのがやはり同じだ。

ウィングスはこれに対して「ヒップホップマインドを理解してラップをしていてかっこよかった」と評価した。

しかしディアークがチーム対抗戦で興奮した姿を見せると、また別のプロデューサー、ザ・クワイエットは公に「(うちのチームに)来なくてもいい」と述べた。

そしてディアークが最終的にクワイエットのチームへ合流すると「息子みたいだ」と愛情をあからさまに示したが、チーム対抗戦でディアークがひとり舞台下へ降りてきて自身を目立たせようとすると「やりすぎだ*4」と指摘した。

ディアークがまだ幼い年だからこそ彼が良い姿を見せられるように助言した可能性がある。しかしShow Me The Moneyはディアーク以上に突発的な行動をしたり、問題を引き起こすラッパーたちのキャラクターを受け入れてきた。

チェ・ウンソの歌詞を賞賛するものの、この歌詞が「Show Me The Money777」のラッパーと何が違うのかは語られず、ディアークのラップの実力と才能を賞賛しながらも彼らが容認する範囲を超えることは受け入れない。

ラッパーがラップで勝ってこの番組では15歳の2人のラッパーは子供扱いを受ける。

 

Mnet「高等ラッパー」出身、オション・ガム*5(チェ・ハミン)が「Show Me The Money777」で見せた態度はShow Me The Moneyをはじめ、韓国ヒップホップシーンが10代のラッパーに何を要求しているのかを象徴的に表していた。

彼は「高等ラッパー」で「Osshun この惑星には音楽よりもっと気軽に楽しめる絵が本当に多いけれども/俺の考えを描き出させる絵の具はこれだけだから」というような叙情的な歌詞と夢幻的でメロディックなラップで注目を浴びた。

しかし、オションは「Show Me The Money777」で「2億稼いだら俺はすぐに車を買いに行ってから/全部掃き入れよう 宝石 足の指まで/let me see 秘密のクラブ パーティーでビキニgirls‘」とラップした。

オションは「高等ラッパー」出演後、スウィングスが運営するリンチピンミュージック(ジャストミュージック)に加入した。

そして「高等ラッパー」当時「自尊心が高い君だから(舞台を)力強くする必要はない」と言ったスウィングスは「Show Me The Money777」ではオションが不振な姿を見せると「カメラの前で泣いて見せるのか、しっかりしろ」と残酷な態度をとる。

高等ラッパーシーズン2のMCだったノクサルが「Show Me The Money777」で「未成年のラッパーに水準を割られてしまうと、それは濃厚だとは言えない」と言ったのは実に象徴的だ。

「Show Me The Money777」、またはそれらを審査するプロデューサー達は10代の出演者たちに彼ら独自のスタイルを認めて育てることよりもショーで要求されるスタイルやその視点から眺めた実力の基準に従うことを望む。

 

「高等ラッパー出身者は最初から相手にしないつもりだ」

ラッパー・キッドミリは「Show Me The Money777」の1話から「高等ラッパー」に対する拒否感を露骨にあらわした。

彼は審査で「高等ラッパー ぶっちゃけアイツの曲いいけど/アイツの元ネタは誰から?」などと自身の曲『IndiGO』の歌詞をそのまま利用して、高等ラッパー出演者たちを「放送人」などと貶したりもした。

キッドミリが「高等ラッパー」をディスする背景には「高等ラッパー」シーズン2の3位 ビンチェン(イ・ビョンジェ)が自身のフローを真似ている疑い*6がある。

彼がビンチェンに対する不満をディスで表現することは十分に可能だ。しかしShow Me The Moneyこそ番組開始当初からヒップホップの少々の要素だけを持ってきて刺激的にパッキングして放送していると批判を受けた。Show Me The Money出演ラッパーこそ放送の恩恵を最も多く受けたと言っても過言ではない。

全体をディスすることは結局相対的に幼い出演者を卑下することに変わりない。

皮肉なことに、『IndiGO』には「高等ラッパー」で認知度を高めたYoungB(ヤン・ホンウォン)とNO:ELも参加している。2人のラッパーが自らを「高等ラッパー」とは一線を画すというジェスチャーだ。

「高等ラッパー」の人気は「放送人」で得るものであり、Show Me The Moneyのような番組や影響力のあるヒップホップのレベルでラッパーとして認知されるためにプロデューサーや他の成人の出演者が考える良いラッパーの基準に合わせなければならない。時には自身が認知度を築いた番組をも否定しなければならない。

既存のラッパーたちが見せることのできなかった個性を持っていた10代のラッパーたちはShow Me The Moneyを通じて既存のラッパーとプロデューサーが望むことに従わざるを得ない状況だ。

Show Me The Moneyはラッパーたちに機会を与えるという大義名分でラッパーたちがプロデューサーの前で丁寧に立って審査を受けるようにした。

さらに米国のラッパー、スヌープ・ドッグの前ではラッパーたちが脱落しないようにマイクを奪い合いながらサイファーしろと要求したりもした。

「高等ラッパー」出身またはチェ・ウンソやディアークのような10代のラッパーたちに接する「Show Me The Money777」の方式はShow Me The Moneyが抱いていた問題を浮き彫りにする。

新しい才能が出てもShow Me The Moneyまたはプロデューサーたちが求める程度にだけ裁断され、10代のラッパーたちは実力を証明して舞台に上がっても大人のラッパーと同等の資格で評価されない。

「Show Me The Money777」またはこの番組のプロデューサーとラッパーたちが考えるヒップホップはそのようなものなのかもしれない。

そうしてこそ彼らはシーズンごとに繰り返される「金と女」に近づけるのだと解釈することもできる。

しかし、昨年のShow Me The Money6で最も話題を集めたのは所属事務所もなく憂鬱症と自我省察を主題にラップを書いたウ・ウォンジェだったし、昨年の韓国ヒップホップの最重要曲の1つだった『時差』は大学時代の彼の人生について語られたものだった。

キム・ハオンは「高等ラッパー」シーズン2に続いて、アルバム「TRAVEL:NOAH」で持続的な反応を得ており、「Show Me The Money777」の競演曲の中でも「Good Day」や「サイムサイム」のようにロマンチックな雰囲気の曲がチャートで反応を得始めた。時代が変わり、主人公も変わる。

Show Me The Moneyもその変化の中で人気を得た。ところがこの番組の出演者たちがいつのまにか10代のラッパーたちに彼らの基準を要求する。

ヒップホップというジャンルとは不釣り合いな光景だ。

 

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スウィンスが何気なく言ったであろう言葉を皮切りに、SMTMという番組とそれに群がるラッパーたちを論理的に批判していくスタイルが上質なディスを思わせる文章でした。

筆者…ヒップホップのマインドを貫いててカッコいい!

 

で、チェ・ウンソって誰だっけ…?と一瞬思いましたが、注目を浴びたディアークとともに中学生ラッパーとして注目されたあの子でした。

ハリセンボンの春菜さんみたいな風貌の…

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たしかにSMTMにおいて、子供と女性と年配は暗黙のうちに鼻つまみ者にされている。

実力だとか以前に、扱いに困るから早く落ちろという不可抗力が番組全体に漂っているし視聴者も彼らの活躍を望んでいないものとされている。実のところ私もそう思っているひとりかもそうかもしれない。

筆者のいう、平等な評価などありはしないんだろうな。

しかし、チェ・ウンソくんの着眼点がとてもよかったのは事実で、「金と女」を語るラッパーばかりでつまらないっていうのを15歳が指摘してしまうというのは痛快でした。

喧嘩と火事は江戸の花、というくらい金と女というテーマはヒップホップの花だとは思うのですが、それに関してあまりにもつまらない歌詞を書くラッパーが多すぎるのも事実。

だから内省的な歌詞を書く子たちが出てくる高等ラッパーが面白かったということは、私も感ずるところでした。

 

エモい歌詞を書いていたハミンくんが「クラブでパーティー ビキニgirls'」ってなどとラップしてたなんて…そのくだりは爆笑しましたが、涙無くして読めなかったです…

マジかよ。

しかし、SMTMに何かしらの形で出ないと食いぶちが稼げない、というのが今の韓国ラッパーの現実だと思います。よほどの有名人ではない限り、番組に関わらない形でラッパーとしてやっていくには無理がある。番組の存在が大きくなりすぎた故の構造上の問題があると思います。

番組に出ず、SMTMを批判しながらも独自路線を貫くジャスディスがとても好きだけれど、本当に彼のようにやっていけるラッパーは一握りだし、今回MKIT勢が出たことにも結構驚きました。のえるくんにももうサバイバル番組には出て欲しくなかった。

でも彼のボスはメディアを堂々と利用するタイプだから仕方ないのかもしれない。

 

番組のために自分のスタイルを捻じ曲げるのか、貫き通せるような屈強なスタイルを確立していくのか、それは人それぞれだけれどラッパーも生活かかってるよなーと思うと、番組の基準を一概に批判することもできないなぁと感じました。

日本のファンとしてはSMTM出てくれると露出が増えて追いやすいし…なんていう気持ちもあります。

 

SMTMも回を重ね、khhが円熟期を迎えるなか、トレンドは“鬱と失恋”なのではないでしょうか。

鬱、自分の中の鬱屈したもの、ときに自虐、忘れられない過去…そういうものをラップにして多くなくても一部の人の共感を呼ぶこと、弱くてもいいんだよ、みたいなメッセージは人を傷つけない。

また失恋をテーマにしたものもあの時の自分はこうだった、別れた恋人にこうしてあげればよかった、という自省的内容でロマンチックに語ることができる。

これを今期うまくやっているのがチャンモで、クギくん・シュパビの曲は両方とも別れた恋人に関することがテーマです。

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まぁ個人的には失恋系の曲聞くとメソメソ未練たらしく言うなら付き合ってるときに良くしてやれよ!!!とか思うけど。

 

EKの、仲間大事!的なテーマも熱かったけど脱落してしまい残念でした。

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こっち系もヒップホップの定番なのでありきたりではありますが番組内では重用されていくのではと思います。

仲間大事、家族・恋人・友達に感謝!ってやつ。

 

結局、金と女というテーマが悪いのではなく、それにウィットを加えて語らないラッパーがつまらないのです。

だから、みんなでArtistになろう!と驚異の発想力で周囲に投げかける私の推しは尊いよな(真顔)

 

高等ラッパーを卑下して批評の対象になったキドミリですが、まさにChangeみたいな歌詞も書けるし、彼はネタが豊富だし、地味と思いきやタフなラッパーだなぁと思います。

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キドミリも今年めちゃくちゃメジャーになってしまった……

 

 

 

引き続き、SMTM777を注視していこう~!

こうなったら祭りは楽しまないとね!

今週の予告のゲストがやばすぎて吹きました。

 

 

 

 

*1:クレパスとはサクラクレパスの商標なので、日本語由来の単語に当たるのかもしれません。

*2:

https://namu.wiki/w/Biznizによると初版販売停止になったとか。2010年の出来事です。

*3:

“15歳ラッパー”D.Ark、元恋人による暴露騒動を釈明・謝罪「彼女の感情を無視した…僕の過ち」 - ENTERTAINMENT - 韓流・韓国芸能ニュースはKstyle 中学生にして「金と女」と女の方を攻略したのかディアーク君…

*4:原文は「緩めろ」という意味でしたが意訳してみました。

*5:

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この曲とか、彼らしくて好き。

*6:うーーん??似てるかなぁ…???